創作着想辞典
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ジメチル水銀

メチル基が2つ直線に結合した水銀.無色の液体で,極めて強い毒性がある.可燃性であり,EU分類では「猛毒(T+)」,「環境への危険性(N)」に該当する.
体内に入るとアミノ酸の一種であるシステインと錯体を形成する.結合した状態は必須アミノ酸であるメチオニンと構造が似ているため,ペプチドの合成に取り込まれ,その後時間をかけて遊離する.そのため生物濃縮が起こりやすく,また被曝から時間が経ってから症状が出る.金属水銀や無機水銀化合物,高級アルキル水銀など有機水銀化合物の多くが急性腎毒性を持つのに対し,時メチル水銀は血液脳関門を通過し,脳内に蓄積するために中枢毒性が強く現れる.これは水俣病の原因として知られるメチル水銀も同様であるが,毒性は圧倒的に時メチル水銀の方が高い.
ジメチル水銀の毒性は1996年8月にダートマス大学教授のKaren Wetterhahn による中毒事故で注目されることとなった.彼女は時メチル水銀を取り扱う実験中,誤って数滴を装着していたラテックス手袋の上に落としてしまった.それから5ヶ月後に水銀中毒の症状が現れ,事故から1年も経たない1997年6月に亡くなった.その後の実験からラテックス手袋越しに付着したジメチル水銀は15秒ほどで皮膚に取り込まれることが明らかとなった.
ジメチル水銀を蒸気で0.001mL吸引しただけで致死的であるとされ,厚生労働省の有害性情報では基本的に全ての急性毒性及び刺激性・感作性においてデータ不足のため分類できないとなっている.事故以前の文献情報ではわずかに甘い香りがするとされているが,これらの理由から基本的に検証することはできない.

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