顧みられない熱帯病
世界保健機関 WHO が「人類の中で制圧しなければならない熱帯病」として定めた20の疾患グループ．その名の通り主に熱帯地域に蔓延し，世界で約17億人が感染リスクに曝されているとされる．尚，「顧みられない」は世界三大感染症とされる「エイズ・マラリア・結核」に対するもの．
2012年にNTDs制圧のためのロードマップが発表され，17の疾患に対する2020年までの方針を示した「ロンドン宣言」が採択される．その後2015年の国連総会において採択されたSDGsでは「3．すべての人に健康と福祉を」のターゲットに指定，2022年のマラリアとNTDsに関するキガリ・サミットにおいて2030年までのロードマップを示した「キガリ宣言」が採択された．
現在，NTDsは最低でも149の国と地域に蔓延しているとされ，100以上の地域で2つ以上，30以上の地域で6つ以上が蔓延していると考えられている．その多くが貧困地や紛争地帯にあり，経済格差を更に生む要因となっている．
NTDsに指定されている20の疾患は以下の通り
・ウイルス性
1．デング熱 Dengue
2．狂犬病 Rabies
・細菌性，真菌性
3．トラコーマ Trachoma
4．ブルーリ潰瘍 Buruli ulcer
5．トレポネーマ感染症(イチゴ腫を含む) Endemic Treponematoses (including yaws)
6．ハンセン病 Leprosy
7．マイセトーマ(菌腫) Mycetoma
・原虫性
8．シャーガス病(アメリカトリパノソーマ) Chagas diseases (American trypanosomiasis)
9．アフリカ睡眠病(アフリカトリパノソーマ) African sleeping sickness (Human African trypanosomiasis)
10．リーシュマニア症 Leishmaniasis
・その他内部寄生虫性
11．嚢尾虫症 Cysticercosis
12．メジナ虫症(ギニア虫症) Dracunculiasis (guinea-worm diseases)
13．包虫症(エキノコックス症) Echinococcosis
14．食物媒介吸虫類感染症 Foodborne trematode infections
15．リンパ系フィラリア症(象皮病) Lymphatic filariasis (elephantiasis)
16．オンコセルカ症（河盲症）Onchoserciasis (river blindness)
17．住血吸虫症(ビルハルツ住血吸虫) Schistosomiasis (bilharziasis)
18．土壌伝播寄生虫症(腸内寄生虫) Soil-transmitted helminthiases, STHs (intestinal parasitic worms)
・その他動物性
19．疥癬 Scabies
20．蛇咬傷 Snakebite
先述の通り熱帯の貧困地域に蔓延する疾患が主であるが，日本国内ではエキノコックスや疥癬などの感染リスクがある．