創作着想辞典
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クールー病

パプアニューギニアのフォレ族に蔓延していた風土病.病原体はプリオンであり,フォレ族の伝統的な食葬によって広がったされる.
 発端は,20世紀初頭にフォレ族内で偶発的に生まれたクロイツフェルト・ヤコブ病 CJD 患者の遺体が食べられたことであると推測されている.特に女性や子供の発症率が高く,これは異常プリオンが集中する脳を食べるのが成人男性より優先された結果であると考えられる.この疾患が世に知られるより前にオーストラリア植民地警察やキリスト教の働きによって食人文化は衰退していたため以降の感染拡大は見られていないが,10年単位で潜伏するため2000年代初頭まで罹患者が確認されていた.
 後の調査でフォレ族やその近隣部族における生存者には特異的なプリオン蛋白遺伝子を保有していることが判明し,マウスを用いた実験でクロイツフェルト・ヤコブ病への抵抗性をもたらすことと,類似のプリオン病である牛海綿状脳症 BSE への抵抗性は持たないことが判明.人類における自然選択が観測された数少ない例の可能性があるとして注目されている.

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